Googleは、Androidデバイス上でChrome OSを仮想マシンとして簡単に実行できるアプリ「Ferrochromeランチャー」の開発を中止した。このプロジェクトは、Androidの仮想化技術のデモとして始まり、技術的には実現可能であったものの、公式リリースに至らない形で幕を下ろした。これにより、Chrome OSをAndroidデバイスで手軽に利用する夢は遠のいたが、手動で仮想化する方法は残されている。

Ferrochromeランチャーの開発中止

Googleは、Androidデバイス上でChrome OSを仮想マシンとして簡単に実行できる「Ferrochromeランチャー」アプリの開発を中止した。このアプリは、Androidの仮想化機能を利用してChrome OSをワンクリックで動作させることを目的としていたが、Googleはその実現を断念した。2023年6月にこのアプリの存在が確認され、ユーザーは期待を寄せていたものの、最終的には公式リリースに至らなかった。

このプロジェクトは、GoogleがAndroid 13で導入したAndroid Virtualization Framework(AVF)を活用する形で進められていた。AVFは、高度なセキュリティを求められるコードの実行を目的とした仮想化技術であり、Chrome OSを簡単に動作させるためのデモンストレーションとして開発されたものである。しかし、GoogleはChrome OSをこの技術で公式にサポートする予定がないことを示し、プロジェクトの終了を決断した。

Ferrochromeランチャーの中止により、Androidデバイス上でChrome OSを手軽に使う道は閉ざされた。しかし、Android仮想化技術の進化は続いており、手動での仮想マシン設定を行えば、引き続きChrome OSの利用は可能である。

Chrome OSの仮想化におけるGoogleの取り組み

Chrome OSをAndroid上で実行するという試みは、Googleが2023年初頭に行った技術デモから始まった。このデモでは、Android 13に導入された仮想化技術、AVFを活用し、Chrome OSがAndroidデバイス上で仮想マシンとして動作する様子が示された。このプロジェクトは、Googleが新たな技術を試すための実験的な取り組みであり、当初から一般ユーザー向けのリリースを想定したものではなかった。

それにもかかわらず、Googleは6月にFerrochromeランチャーと呼ばれるアプリの開発を開始し、Chrome OSをワンクリックで動作させるという大きな進展を見せた。このアプリがリリースされれば、ユーザーは煩雑な手順を踏むことなく、Androidデバイス上でChrome OSを実行できる可能性があった。しかし、Googleは最終的にこのアプリを公開せず、プロジェクトは終了した。

Googleがこのような仮想化技術に取り組む背景には、Androidデバイスのハードウェア性能の向上がある。最新のAndroidデバイスは高性能なプロセッサを搭載しており、仮想マシン上でPC向けのOSを実行することも十分に可能になっている。

AVFとChrome OSの関係性

Android Virtualization Framework(AVF)は、GoogleがAndroid 13で導入した仮想化技術であり、Chrome OSをAndroid上で動作させるための基盤となった。AVFは、高度に隔離された仮想環境を提供し、セキュリティが求められるアプリやコードを実行するための技術として開発された。この技術を利用することで、Chrome OSのような別のオペレーティングシステムを仮想マシン上で動作させることが可能になる。

AVFは当初、Android内で小規模なワークロードを実行するためのものとして設計されたが、Googleはその拡張性を活用し、完全なグラフィカルインターフェースを持つオペレーティングシステムの実行にも対応させた。これにより、AndroidデバイスでChrome OSを動作させるという試みが実現した。しかし、この技術はあくまで実験的なものであり、一般ユーザー向けの正式なリリースには至らなかった。

Googleは、AVFを使ったさらなる仮想化技術の発展に取り組んでいるが、Chrome OSをAndroid上で簡単に実行できるFerrochromeランチャーはその計画から外れた。AVF自体の開発は続いており、今後もセキュリティと仮想化における重要な技術として進化していくことが期待される。

手動でのChrome OS仮想化は可能

Ferrochromeランチャーが開発中止となったことで、Androidデバイス上でChrome OSを簡単に実行する道は閉ざされたが、手動での仮想化は依然として可能である。Ferrochromeランチャーが担っていたChrome OSの自動セットアップ機能はなくなったが、手作業で必要なファイルを取得し、仮想マシンの設定を行えばChrome OSを実行できる。

手動でChrome OSを動作させるためには、まずChrome OSのイメージファイルを取得し、それをAndroidデバイスに配置する必要がある。次に、Androidの仮想マシン設定を行い、仮想マシン上でChrome OSを起動する手順を踏む。これにはある程度の技術的な知識が必要であり、Googleが意図していたような「ワンクリック」でのセットアップとは異なる。

AVFの技術的な進化により、こうした仮想化の可能性は拡大しているが、ユーザーは依然として手間をかけて設定を行う必要がある。それでも、Androidデバイスのハードウェア性能が十分に高い場合、PCに近い操作環境を実現できる点は大きな魅力である。