サムスンが開発中の400層NANDチップは、AIデータセンター向けに特化した次世代メモリ技術として注目されている。第10世代となるこのV10 NANDチップは、メモリセルと周辺回路を分けて構築し、熱の蓄積を抑える「ボンディング技術」を活用することで、容量と性能を最大化する設計が採用されている。
この新技術により、200TBを超えるストレージ容量を持つ超大容量SSDの実現が見込まれ、膨大なデータを効率的に管理するAIアプリケーションに対応するソリューションとして位置づけられている。また、2030年までには1,000層を超えるNANDの実現も計画されており、サムスンのメモリロードマップは技術革新と高容量ストレージ市場でのリーダーシップ維持に向けて進化を続けている。
さらに、DRAM分野でも新たな世代の製品を開発し、AIチップでの使用に適した性能向上を図っており、AI技術の発展に伴う高まるデータ需要に応える準備を進めている。
革新のV10 NANDチップがAIデータセンターに与える影響
サムスンのV10 NANDチップは、AIデータセンターに大きな影響を与えると見られる。このチップは従来の286層V9を超える400層の構造を持ち、特に大容量データ処理に特化した技術として設計されている。サムスンは、データ処理速度と容量の向上を両立させるために、メモリセルと周辺回路を分離して別々のウエハに構築し、「ボンディング技術」によって統合するアプローチを採用している。
この技術により、熱の蓄積を抑え、信頼性と安定性を維持しつつ、性能向上を実現している。
このチップの導入により、AIデータセンターで求められる膨大なデータ処理やリアルタイムでの情報アクセスが可能になると期待されている。例えば、大規模な画像認識システムや自然言語処理技術においても高速かつ高効率でのデータ処理が実現し、AI技術の活用が一層進む可能性がある。この動向は、AIアプリケーションのさらなる普及と多様化にもつながるだろう。
TechRadarも、このチップが「AIのための夢のNAND」と評価していることから、AI分野での応用可能性に業界が期待を寄せていることがわかる。
第11世代V11 NANDと1,000層NANDの未来が示すもの
サムスンは、さらに進化した第11世代のV11 NANDチップを2027年にリリースする計画を発表している。この新チップは現行の400層NANDから約50%の転送速度向上が見込まれており、急速に増大するデータストレージニーズに応えるものだ。特に、AI関連のリアルタイムデータ解析やビッグデータの処理速度が向上することで、従来のインフラの限界を大きく超える性能が期待されている。
また、2030年に向けた1,000層NANDチップの構想も注目に値する。このような革新が実現することで、単一デバイスでのストレージ容量が飛躍的に向上し、次世代AIハイパースケールSSDにおいて、200TBを超える大容量ストレージが一般化する可能性がある。これにより、データセンターの規模縮小やエネルギー効率の向上が進み、持続可能なITインフラを構築するための一助となると考えられる。
サムスンのメモリーチップの進化は、AIデータセンターの未来像を再構築する重要な要素といえる。
次世代DRAM技術がもたらす高性能AIチップの展望
サムスンはNAND技術の進化に加え、DRAM分野でも革新を続けている。同社は2024年末までに第6世代の1c DRAMと第7世代の1d DRAMのリリースを目指しており、これらの新世代DRAMは高性能AIチップにおいて重要な役割を果たすと期待されている。
さらに、サムスンは2027年までに10nm未満の0a DRAMを発表する計画を示しており、垂直チャネルトランジスタ構造を採用したことで、性能とエネルギー効率の向上が図られる見込みだ。
これらの新技術により、AIチップのパフォーマンスはさらに強化され、膨大なデータをリアルタイムで処理する能力が増加する。また、DRAM技術の進展によって、AI分野だけでなく、ハイパフォーマンスコンピューティングやクラウドサービスなどでも恩恵を受ける可能性がある。
サムスンのこのロードマップは、今後のデータ主導の社会において、次世代の技術革新がどのように進むべきかを示す指針となっているといえる。