Morgan Stanleyの最新調査「Audio Entertainment Survey」により、車内エンターテインメントの新たな傾向が明らかになった。音楽ストリーミング利用者の間でAppleのCarPlayのシェアが約2%増加した一方、Android Autoは7%もの大幅な減少を記録している。この背景には、IPベースのストリーミングよりもFMラジオを選ぶドライバーの増加や、リスニング習慣の変化があると考えられる。
また、従来のラジオの支配力は依然として根強く、完全な衰退には至っていない。しかし、ラジオ人気は着実に減少しており、ストリーミングサービスがその座を奪いつつある。この変化は、車載プラットフォームにおける技術競争がさらに激化する可能性を示唆している。音楽からTikTokまで、多様化する車内エンタメの未来が注目される。
Android Auto人気低下の背景にあるリスニング習慣の変化
Morgan Stanleyの「Audio Entertainment Survey」によると、Android Autoの利用率が7%減少した一方で、AppleのCarPlayは約2%増加した。この差は、単にユーザーのプラットフォーム選択だけでなく、車内での音楽の聴き方そのものが変化していることを示唆している。たとえば、近年は従来型のラジオを選ぶドライバーが増加し、ストリーミングへの依存が減少している傾向がある。
一方で、ストリーミングを選ぶ層の中でも、Android AutoよりもCarPlayを好むユーザーが増えている点が興味深い。これは、CarPlayが提供するインターフェースやApple製品との統合性が要因の一部と考えられる。さらに、Android Autoが特定の車両で動作に制限があるケースがあることも利用率低下に影響している可能性がある。
車載エンターテインメントは、ハードウェアだけでなく、ユーザー体験全体が競争の焦点となっている。Android Autoは多機能である一方、他の選択肢よりも直感的な使い勝手が不足していると指摘されることもある。この変化は、メーカーやプラットフォーム提供者に対し、さらなる改善と差別化を求める強いメッセージともいえる。
従来型ラジオの根強い影響力とストリーミングの未来
調査によれば、車内で音楽を聴くドライバーの割合は数年で大幅に減少している。2017年には45%が音楽を楽しんでいたが、現在その割合はわずか27%にとどまる。だが、これに反してFMラジオの人気は依然として根強く、ストリーミングが完全に取って代わるには時間がかかりそうだ。
興味深い点は、ラジオのシェアが徐々に減少しながらも、一定の安定性を維持していることである。昨年の調査では、その人気がわずか3%しか低下しなかったという。これは、ラジオが地域密着型の情報提供や即時性を武器に、依然として多くのユーザーを引きつけているためだと考えられる。一方、ストリーミングプラットフォームは、利用者層を拡大するために独自コンテンツやパーソナライズ機能の強化を進めている。
車内エンターテインメントはますます多様化しており、今後のトレンドに注目が集まる。SpotifyやApple Musicのようなサービスはさらなる市場シェア獲得を目指しているが、ラジオの存在感を完全に消すことは難しいといえるだろう。
TikTokが車内エンターテインメントとして台頭する可能性
調査には含まれていないが、TikTokが車内エンタメとして注目を集めている事実も見逃せない。短尺動画の流行は、従来の音楽やラジオを補完する新たな選択肢として浮上している。しかし、TikTokの未来は一筋縄ではいかない。アメリカでの使用禁止に関する議論が進んでおり、規制が進む場合、プラットフォーム全体が縮小する可能性もある。
このような新興プラットフォームの登場は、消費者の娯楽のあり方が大きく変化していることを示している。特に若い世代では、音楽だけでなく、映像コンテンツやインタラクティブな要素を含む体験が求められている。この動きは、既存のエンターテインメント業界に対しても新たな挑戦を突きつけるだろう。
今後、TikTokのような動画プラットフォームが車内エンタメの主流となるかどうかは、法規制や技術革新次第である。車内エンターテインメントの未来は、ラジオ、ストリーミング、そして新たなフォーマットとの競争が一層激化することが予想される。