サムスンが初のXRヘッドセット「Project Moohan」を正式発表し、その詳細が明らかになった。このヘッドセットは、Android XR OSを搭載し、AI技術「Gemini AI」や直感的なジェスチャー操作を採用している点が注目される。8つの前面カメラや眼球トラッキング機能を備え、USB Type-C経由の外部バッテリーパックで動作する設計となっている。

ユーザーは手や指を使った操作でアプリや機能に簡単にアクセス可能。Google Playストアに対応しており、数百万のAndroidアプリが利用できるほか、特定のアプリはこのデバイス向けに最適化されている。また、仮想デスクトップ上でのマルチウィンドウ管理や、専用のジェスチャーでの検索機能「Circle to Search」も搭載されている。

発売時期は年末商戦前や2025年中頃と予測されており、Apple Vision Proを意識した約2,000ドルの価格帯が噂されているが、公式な価格は未発表である。

サムスンのXRヘッドセットに見るハードウェアの進化と設計思想

「Project Moohan」のハードウェア構成には、サムスンの設計思想が色濃く反映されている。このXRヘッドセットは、8つの前面カメラと2つの眼球トラッキングカメラを搭載し、視覚データの収集と処理を高度化している点が特徴である。さらに、外光の侵入を抑えるフェイスプレートや、背面ダイヤルによるフィット感の調整機能など、細部に至るまで快適性と没入感を意識したデザインとなっている。

これに加え、外部バッテリーを使用したUSB Type-C接続が採用され、長時間使用を可能にしている点も注目すべきポイントである。電源ボタンや音量調節ロッカー、タッチパッドの配置は、従来のスマートデバイスの設計に基づいており、ユーザーにとって直感的な操作性を実現している。

この設計思想は、他社製品との差別化にもつながる。特に、サムスンがこれまで培ってきた素材選定のノウハウを活かし、金属、ガラス、プラスチック、ファブリックを適切に組み合わせた点は、Apple Vision Proなど競合製品に対抗する戦略の一環と考えられる。素材の多様性は重量や耐久性のバランス調整にも寄与しており、XRデバイスの市場に新たな基準を提示しているといえる。


XR体験を一新するGemini AIと「Circle to Search」の実力

サムスンのXRヘッドセットは、単なるVRやARデバイスを超えた新たな体験を提案している。その鍵となるのが、AI機能「Gemini AI」と検索機能「Circle to Search」の搭載である。

Gemini AIは、ユーザーの音声指示に応じて情報を取得したり、アプリケーションの整理や操作をサポートするなど、直感的で高度なインタラクションを可能にしている。また、「Circle to Search」は、手で画面上の任意の場所を囲むだけで関連情報を検索できるユニークな操作性を提供している。

これらの機能は、視覚や音声といった多様な感覚に訴える没入型の操作体験を目指している。例えば、ユーザーがGoogle MapsやYouTubeのような最適化されたアプリを使用する際には、特別なUI要素が追加され、これまでにないインタラクションを実現する。こうした技術の進歩は、単なるソフトウェアの進化ではなく、ハードウェアとの高度な統合によって可能になっている。

一方で、これらの機能が日常生活やビジネスシーンでどのように活用されるかについては、今後のソフトウェアアップデートや開発者の取り組みによる部分も多いだろう。サムスンがどのようなエコシステムを構築するかが、他のデバイスとの差別化の鍵になると考えられる。


アンドロイドOSの利点とGoogle Playストア対応がもたらす可能性

「Project Moohan」はAndroid XR OSを搭載し、Google Playストアを介して数百万ものアプリやゲームにアクセス可能である。この広範なアプリ対応は、既存のAndroidデバイスとの親和性を高め、ユーザーがこれまで慣れ親しんだ操作環境をそのまま引き継ぐことを可能にしている。加えて、アプリウィンドウのサイズ変更や自由な配置といったカスタマイズ性の高さは、仮想デスクトップ環境での利便性を向上させる。

また、Google MapsやYouTubeといったアプリがXR向けに最適化されている点は、他社製品との差別化を意識した取り組みといえる。これにより、エンターテインメントやナビゲーションといった分野で、より深い没入感を提供する可能性が広がる。特に、マルチウィンドウ管理機能は、作業効率の向上やエンターテインメント用途での利便性を大きく向上させるだろう。

一方で、このAndroidベースのアプローチは、競合製品が独自OSを採用する中で、エコシステムの広がりを重視した戦略であるといえる。既存のGoogleサービスやAndroidアプリを取り込むことで、ユーザーの選択肢を広げつつ、他のデバイスとの連携も視野に入れている。これにより、サムスンは他社製品との差別化だけでなく、既存ユーザー層の囲い込みにも成功する可能性がある。

Source:SamMobile