Googleが新たに発表した「Pixel 9 Pro Fold」は、初代モデルの課題を一掃するべく、設計から一新されたデバイスである。極薄のデザインと大画面の折りたたみディスプレイは、最新のAndroid体験と組み合わさり、折りたたみスマホ市場で一際存在感を放っている。

しかし、その高額な価格と従来からの折りたたみスマホに共通する欠点は依然として残されており、普及にはまだ時間がかかりそうだ。それでも、Pixel 9 Pro Foldは独自の魅力を備えた端末として、多くのユーザーに愛される可能性がある。

初代からの大幅な進化とデザインの改善

Pixel 9 Pro Foldは、Googleの折りたたみスマホシリーズにおいて大きな進化を遂げたモデルである。初代のPixel Foldでは、ヒンジが完全に開かず、外部ディスプレイが狭く、ベゼルが大きいといった欠点が目立っていた。これらの課題を受け、Pixel 9 Pro Foldではヒンジが180度開くように改善され、より薄くて持ちやすいデザインが実現された。外部ディスプレイも6.3インチに拡大し、通常のスマートフォンとしても十分に機能する。

特に注目すべきは、その薄さである。Pixel 9 Pro Foldは、開いた状態で5.1mmの薄さを誇り、これまでにないスリムな形状を実現している。この薄さが使い勝手に大きく貢献し、折りたたみスマホ特有の重量感や不便さを軽減している。ヒンジのスムーズな動作も、初代モデルとは異なり、開閉が容易になった。しかし、その分ヒンジの「緩さ」が気になる点もあり、耐久性に不安を感じるユーザーも少なくない。

外部と内部のディスプレイにおいても、改良が見られる。内部ディスプレイは8インチの大型OLEDスクリーンで、ほぼ正方形に近い形状を持ち、マルチタスクに最適化されている。一方で、強い日差しの下では反射が目立つなど、依然として改善の余地は残されている。

高性能なディスプレイと独自のユーザー体験

Pixel 9 Pro Foldは、Googleの「Material You」デザインと大画面のOLEDディスプレイが融合し、優れたユーザー体験を提供する。外部ディスプレイはPixel 9と同等の6.3インチOLEDスクリーンを採用しており、閉じた状態でも従来のスマートフォンとして十分に機能する。内部の8インチディスプレイは、2,076 x 2,152ピクセルの解像度を持ち、鮮やかな表示と広い作業スペースを提供する。

特に、Googleが独自に開発したGemini AIがユーザー体験を大きく向上させている点が注目される。Geminiは、アプリのスムーズな切り替えやタスクバーの操作を容易にし、折りたたみスマホならではの効率的なマルチタスク操作を可能にしている。また、アプリペアのショートカット保存機能なども追加されており、日常の使い勝手が大幅に向上している。折りたたみスマホにおけるソフトウェア面の最適化が、Pixel 9 Pro Foldを他の競合機種と一線を画す存在にしている。

一方で、SamsungのGalaxy Z Fold 6のような高度なマルチウィンドウ機能と比べると、Googleのアプローチはややシンプルである。それでも、直感的な操作性と使いやすさは、特に折りたたみスマホに不慣れなユーザーにとって大きな魅力となっている。

カメラ性能と充電機能の課題

Pixel 9 Pro Foldのカメラ性能は、Pixelシリーズ全体と比較してやや控えめである。メインカメラは48MPのセンサーを搭載しており、Pixel 9シリーズと比べると若干の劣化が見られる。特に低照度環境での撮影においては、Pixel 9シリーズの方がより詳細な画像を提供する。また、ナイトモードでの撮影では、Pixel 9 Pro Foldの写真はブレが生じやすく、画質の低下が目立つ。

カメラの配置にも問題がある。背面カメラはフラットなPixelシリーズに比べて、テーブルに置いた際の安定性が欠ける。さらに、望遠カメラは5倍の光学ズームをサポートしているが、センサーの小型化によりズーム時の画質には限界がある。それでも、GoogleのHDR+処理技術によって、日常的な撮影には十分なパフォーマンスを発揮する。特に、シャッタースピードとフォーカスの速さは他のスマートフォンと比べても優れている。

充電機能についても課題が残る。Pixel 9シリーズのフラットモデルが最大27Wの充電をサポートする一方で、Pixel 9 Pro Foldは21Wにとどまっており、フラッグシップモデルとしてはやや物足りない。また、無線充電も7.5Wまでしか対応しておらず、充電の利便性には改善の余地がある。

価格と市場展開における折りたたみスマホの位置づけ

Pixel 9 Pro Foldの最大の課題はその価格である。$1,800という高額な価格設定は、一般的なユーザーにとって大きな障壁となっている。折りたたみスマホ全体が高価であるため、この問題はGoogleだけに限らないが、依然として「ニッチ」なデバイスとして位置づけられている。現在の市場において、主流のスマートフォンは依然としてフラットな形状のものであり、折りたたみスマホが一般に受け入れられるには時間がかかるだろう。

その一方で、Pixel 9 Pro Foldはデバイスとして非常に魅力的であり、特にPixelシリーズのファンにとっては魅力的な選択肢となるだろう。大画面を活かしたマルチタスク機能や、独自のソフトウェア最適化は、他の競合機種とは異なる強みである。しかし、一般ユーザーにとってこの価格帯での選択は難しく、折りたたみスマホがより広く普及するためには、価格の引き下げが必要となるだろう。

また、Appleが折りたたみスマホ市場に参入することで、価格競争や技術革新が進む可能性がある。現時点では、Pixel 9 Pro Foldは折りたたみスマホ市場における最前線の一角を担っているが、まだ「高嶺の花」としての位置づけが強い。