米司法省は、Googleに対しChromeブラウザとAndroidオペレーティングシステムの事業を分割するよう求める動きを見せている。これは、Googleがオンライン検索市場において不法な独占を築いていると指摘されたことに端を発する。2021年にGoogleがAppleなどに対して支払った年間26億ドルのデフォルト検索エンジン契約も、見直しの対象となる可能性がある。
米司法省、独占的支配を指摘し分割を提案
米司法省は、Googleの検索市場における独占的支配を問題視し、同社に対してChromeブラウザとAndroidオペレーティングシステムの分割を提案している。この提案は、2023年8月に米国の裁判所がGoogleの支配を「違法」と認定したことに端を発しており、司法省はその支配力を削減し、競争を促進するための対策を求めている。
Googleは現在、米国のインターネット検索の90%を処理しており、その支配力は市場全体に大きな影響を与えている。司法省は、この独占的地位が消費者に不利益をもたらし、他の企業の成長を阻害していると指摘している。
今回の提案は、単なる罰金や制裁を超え、企業の構造自体に影響を与えるものであり、Googleの市場支配を根本的に変える可能性がある。司法省は、Googleが今後もデジタル市場において支配力を行使しないようにするため、分割という極端な措置を提案した。
Googleの年次支払いとデフォルト検索設定の終焉か
Googleは、Appleや他のデバイスメーカーに対して年次で多額の支払いを行い、自社の検索エンジンがデフォルト設定としてインストールされるように契約を結んできた。2021年には、この支払い総額が26.3億ドルに達している。司法省は、このような契約が市場競争を歪めているとして、これらの取引の終了を求める考えを示している。
この慣行が続く限り、消費者はデバイスを購入した際に自動的にGoogleの検索エンジンを使うことになり、他の検索エンジンへの切り替えが事実上困難となっている。司法省は、これが市場での選択肢を狭め、競争を阻害していると判断した。
仮にこの提案が実現すれば、Appleや他のメーカーは、デバイスにプリインストールする検索エンジンを自由に選ぶことができるようになり、BingやDuckDuckGoなどの競合企業に大きなチャンスが生まれることになる。
AI市場での支配を防ぐための新たな規制案
Googleが現在進めている人工知能(AI)技術に関しても、米司法省はその市場支配を防ぐための新たな規制案を検討している。具体的には、Googleの検索エンジンやAIに関連するインデックスやデータ、モデルを他社にも提供することを義務付ける案が浮上している。
司法省は、AI技術が今後急速に成長する中で、Googleがその技術を利用して市場での支配力を強化するリスクを懸念している。特に、検索エンジンの進化によって、AI技術が情報収集や意思決定において重要な役割を果たすようになると、Googleがその支配を続けることで競争が阻害される可能性が高いと見ている。
Googleは、このような規制がAI業界全体に悪影響を及ぼし、イノベーションを阻害する恐れがあると主張しているが、司法省は競争の公平性を保つためには不可欠な措置だと強調している。
競争環境の改善と他企業の成長促進を目指す
米司法省が提案している一連の措置は、Googleの市場支配を制限し、競争環境を改善することを目的としている。これにより、YelpやDuckDuckGoなどの小規模な競合企業が、より公平な条件でGoogleと競争できるようになることが期待されている。
Yelpは、Googleが自社の検索結果で自社サービスを優遇していることを批判し、特にローカルビジネスページの検索結果において公正な競争が行われていないと主張している。また、DuckDuckGoは、GoogleのChromeブラウザとAIサービスの分割が議論されるべきだと提案している。
米司法省がこれらの提案を実現すれば、検索エンジン市場やAI市場において多様な企業が成長する土壌が整い、消費者にとっても選択肢が広がることが期待される。Googleに対する圧力は、今後も増すことが予想され、技術業界全体に大きな影響を与える可能性がある。