Samsungの半導体事業であるSamsung Foundryは、最先端チップ製造の競争においてTSMCに遅れを取っている。これにより、Qualcommは最新のSnapdragon 8 Eliteチップセットの製造をTSMCの3nmプロセスに委託する決断を下した。Samsungは、数十億ドルの契約を失うこととなり、将来的な影響も懸念されている。
Samsung Foundryの苦境
Samsung Foundryは、長年にわたり最先端チップの製造で競合するTSMCと激しい競争を繰り広げてきた。しかし、最近ではその競争力に陰りが見え始めている。最も重要な要因の一つとして、Samsungの3nmプロセスの歩留まりが低迷していることが挙げられる。歩留まりの問題は、製造工程で不良品が出る割合が高いことを意味し、これが大きな収益損失に直結している。
この問題は、複数のチップ設計企業がTSMCを選択する理由となっている。QualcommのSnapdragon 8 Eliteの製造もその一例であり、Samsungはこの重要な契約をTSMCに奪われた。Samsungは、自社の工場を最先端技術に対応させるために巨額の投資を行っているが、歩留まりの改善は依然として大きな課題となっている。こうした状況は、Samsungの半導体事業全体にとって深刻な打撃となりつつある。
Snapdragon 8 Eliteの製造はTSMC独占に
Snapdragon 8 Eliteは、Qualcommが開発した最新のモバイルチップセットであり、次世代スマートフォンの性能向上に寄与することが期待されている。しかし、SamsungではなくTSMCがその製造を完全に請け負うことが正式に決定した。これにより、Samsungは数十億ドル規模の収益を逃すこととなった。
当初は、QualcommがSamsungとTSMCの両方に製造を依頼する可能性が取り沙汰されていたが、最終的にはTSMCのみが選ばれた。これは、TSMCがSamsungに比べて安定した製造プロセスを持ち、高い歩留まりを達成していることが理由とされている。特に3nmプロセスでの製造能力が、TSMCにとって大きな強みとなっている。Qualcommにとって、信頼性の高い供給元を確保することは製品の成功に直結するため、TSMCへの完全依存は自然な選択であったといえる。
Exynos 2500、Galaxy S25シリーズへの影響
Samsungは当初、次期フラッグシップモデルであるGalaxy S25シリーズにおいて、自社開発のExynos 2500チップを一部に採用する計画であった。しかし、Samsung Foundryの3nmプロセスでの歩留まり問題が解決されない限り、この計画は実現困難となる可能性が高い。現在、SamsungはGalaxy S25シリーズ全体にQualcommのSnapdragon 8 Eliteを採用する方向で検討していると報じられている。
この決定が下されれば、Samsungにとっては自社製チップの開発と製造戦略に大きな影響を及ぼす。過去には、地域ごとにExynosとSnapdragonを分けて搭載する戦略を取っていたが、歩留まりの低さがその選択肢を狭めている。Exynos 2500が期待されていた分、失敗はSamsungにとって大きな後退を意味するが、消費者に対しては性能面での期待が維持されるかもしれない。
QualcommとSamsungの未来はどうなる?
QualcommとSamsungの関係は、これまで緊密な協力を重ねてきたものの、今回のSnapdragon 8 Eliteの製造契約がTSMCに独占されたことで、将来的にどう変化するかが注目されている。Samsung Foundryの現状を見る限り、今後もTSMCが製造契約を独占し続ける可能性が高いとみられている。
Qualcommにとって、安定した製造パートナーを持つことは製品の競争力を維持するために極めて重要である。そのため、歩留まりに問題を抱えるSamsungに再び製造を依頼するかどうかは疑問である。逆に、Samsungは自社のFoundry事業を立て直すためにさらなる技術革新と投資が求められる。双方にとって重要な岐路に立たされているが、今後の動向次第では、関係が再び深まる可能性も残されている。