かつてGear VRでVR市場を席巻したSamsungが、2025年に再びXR(拡張現実)デバイス市場へ戻る可能性が浮上した。Samsung ElectronicsのCEOは2022年のMWCで新たなヘッドセットへの意欲を示していたが、AppleのVision Proの影響によりリリースが延期されるなど進展が見られなかった。
しかし、2024年のUnpackedイベントで再びXR製品への関心を表明し、IDCのアナリストによれば、2025年初頭にGalaxy S25シリーズと同時発表される可能性が示唆されている。今回の開発にはGoogleとQualcommが協力し、Samsungのディスプレイ技術やISOCELLセンサーを用いた高精度のトラッキングも期待される。
Samsungが再びXR分野に戻る理由とは
Samsungは10年前、Gear VRで市場に革命を起こし、VR分野で一時的に支配的な地位を築いた。しかし、その後は撤退し、AppleやMetaなどのライバルが次々とXR市場で存在感を増している。今、Samsungが再びこの分野へ注力する背景には、エコシステムの強化があると考えられる。
IDCアナリストのBryan Ma氏がSamsungのプレゼンテーションから発見した「Galaxyエコシステムにおけるユーザー体験向上」のキーワードは、XRが単なる新規デバイスでなく、既存のGalaxyシリーズを含む製品群と密接に連携する可能性を示唆している。AppleのVision Proも登場し、SamsungにとってはXR分野で競争力を再獲得する絶好の機会と見ているだろう。
XR市場の技術進化に伴い、Samsungが持つディスプレイ技術やISOCELLセンサーが活用されることで、従来より高い没入感や正確なトラッキングが実現可能になると見込まれる。これらの技術的優位性は、他の競合製品との差別化ポイントとなり、XR市場に新たなスタンダードを築く狙いがあるのかもしれない。
新型XRデバイスでのGoogleとQualcommとの協力がもたらす効果
SamsungのXRデバイス開発には、GoogleとQualcommが重要な役割を果たしている。Googleが提供するソフトウェアと、QualcommのSnapdragonチップセットによって構成されるシステムは、既にMetaのQuest 3で成功を収めており、この協力関係がXR分野での安定したパフォーマンスとスムーズな動作を実現する見込みだ。
GSMArenaによれば、Samsungもこのアプローチを採用し、カスタマイズされたAndroidシステムとQualcommの最新チップセットを組み合わせることで、強力なパフォーマンスと高い互換性を提供しようとしている。
この協力関係がSamsungのXRデバイスにおけるユーザー体験向上をサポートし、将来的にはGalaxyシリーズとの接続性を強化することが期待される。また、Samsungは自身の技術も駆使し、高輝度・高解像度のマイクロOLEDディスプレイを搭載する可能性があり、Questシリーズと比較してより鮮明で精細なビジュアル体験を目指している。
高精度なトラッキング技術で実現する没入感とユーザー体験の向上
Samsungは、独自のISOCELLセンサーを活用したトラッキング技術で、XRデバイスにおける没入感をさらに向上させることを目指している。このセンサーには、深度検知機能があり、ユーザーの手や指の動きを正確にキャプチャすることが可能であるため、自然でリアルな操作感が期待できる。
これにより、エンターテインメントやゲームのみならず、医療や教育といった多様な分野でも有用性が増し、ユーザー体験の拡大が図られるだろう。
また、このトラッキング技術を利用することで、SamsungのXRデバイスは単なる表示デバイスから、ユーザーが実際に「触れて」体験できるインタラクティブなプラットフォームへと進化する可能性がある。Samsungのディスプレイ技術と併用することで、XR分野においてこれまでにない没入感を提供し、XRデバイスの使い方そのものを変える存在となるかもしれない。