Samsungは次期アップデート「One UI 7」において、カメラアプリの設計を大幅に見直す方針を明らかにした。この変更で、これまでカメラアプリ内に組み込まれていたAR機能が独立し、各アプリが個別に提供される。

具体的には、AR Doodle、AR Emojiカメラ、AR Emojiスタジオ、AR Emojiステッカーを含む「AR Zone」、および「Deco Pic」や「Quick Measure」も分離され、Galaxy Storeから無料でダウンロード可能となる予定だ。

また、AR Emojiの名称は「Galaxy Avatar」に改称され、機能の独立化と共にブランドイメージも一新される見通しである。AR機能は2018年のGalaxy S9で初登場し、AppleのAnimojiに対抗する形で発展してきたが、今回の分離によって利便性がさらに向上することが期待される。Samsungは、ユーザーが必要な機能を自由に選択できる新たなカメラ体験を提案する。

AR機能のカメラ分離はユーザー体験向上の一手か

SamsungがOne UI 7においてカメラアプリからAR機能を分離する決定は、ユーザー体験の向上を図る新たな一手と見られている。これまで、AR機能は一括でカメラに内包されていたため、利用しないユーザーにとってはメニューが煩雑化し、逆に利用するユーザーには使い勝手が一貫しないという課題があった。

今回の分離で、AR DoodleやAR Emojiといった各種機能が専用アプリとして独立し、必要な機能だけをGalaxy Storeからダウンロードする形に移行する。これにより、カメラアプリ自体がスリム化され、起動や操作の効率が高まると期待されている。

さらに、AR Emojiの「Galaxy Avatar」への名称変更も注目に値する。これは、従来の「エモジ」という概念を超え、より多機能なアバター作成ツールとして進化する方向性を示唆している。カメラアプリの使い勝手を向上させつつ、AR技術の独自性を際立たせるこの分離は、Samsungがユーザーの多様なニーズに応えるための戦略的な動きと考えられる。

AppleのAnimoji対抗戦略とその進化

Samsungが2018年にAR Emojiを発表した際、AppleのAnimojiへの対抗心が背景にあったことは明白だ。AppleのAnimojiは、独自のトゥルーデプスカメラを利用して表情を精密に捉え、ミー文字などのキャラクターに反映させる技術で、当初から注目を集めた。

それに対し、SamsungのAR Emojiはリアルなアバター表現を志向し、ユーザーが自身のアバターを作成することを重視していたが、技術的な違いから反応は割れていた。

今回の名称変更と機能分離によって、Samsungはより幅広いAR技術へのアプローチを示しているといえる。AR技術の進化は必ずしもキャラクター表現に留まらず、メタバースやVR空間への応用も視野に入れる形で発展している。今回の変更がAR技術の新たな活用を促す契機となるかどうか、今後の動向に注目が集まっている。

ARアプリの分離がGalaxyシリーズに与える影響

SamsungのAR機能分離による影響は、Galaxyシリーズ全体に波及する可能性が高い。特に、スマートフォンのパフォーマンスやストレージに対する要求が増大している昨今、必要な機能を個別に選んでインストールできる仕組みは、ユーザーの利便性向上に貢献する。

アプリサイズの最適化や不要機能の削減が進むことで、デバイスの軽量化やバッテリー消費の削減が期待され、日常使用においてもパフォーマンス向上を感じられるだろう。

また、Samsungが提供するGalaxy Storeは、個別アプリ化によりAR関連機能をさらに多彩に展開する場となる可能性がある。AR ZoneやDeco Picといったアプリは、定期的なアップデートや新しい機能の追加を通じて、より柔軟で進化したAR体験を提供することが考えられる。Samsungが公式発表で示唆するように、個別化による新たなエコシステムの形成は、同社のAR技術に対する投資と戦略の深化を感じさせる。