国際データ会社(IDC)の最新レポートによると、2024年のスマートフォン市場は6四半期連続で成長を記録し、第4四半期だけで前年比2.4%増の3億3170万台が出荷された。この成長は主にXiaomiやvivoといった中国メーカーの好調なパフォーマンスによるもので、vivoは前年同期比12.7%の出荷増を達成し、第4四半期で最大の成長率を示した。
一方、AppleとSamsungは依然として市場のトップを維持しているものの、前年よりわずかにシェアを落とした。
年間を通じた市場では、Appleが18.7%、Samsungが18%のシェアを占めたが、Xiaomiが前年比15.4%の成長を記録し、3位を強固なものにした。また、AI技術の進化が今後の競争を左右する鍵となると見られ、特に高価格帯モデルにおいて生成AI(GenAI)の導入が進んでいるという。2025年のさらなる成長が期待される一方で、米国の関税政策の影響が懸念材料となっている。
スマートフォン市場の成長を牽引したXiaomiとvivoの戦略
2024年のスマートフォン市場では、Xiaomiとvivoが市場全体の成長を後押しした立役者として注目を集めた。IDCのデータによると、Xiaomiは第4四半期で前年比4.8%、年間では15.4%という成長を記録した。特に、中価格帯モデルの競争力強化が功を奏し、グローバル市場における存在感を高めた。
また、vivoは第4四半期に前年比12.7%の出荷増を実現し、主要メーカーの中で最も高い成長率を達成した。これには、東南アジアやインド市場での積極的な展開が影響していると考えられる。
この成長の背景には、それぞれのブランドが特定市場におけるニーズを的確に把握し、製品戦略を柔軟に適応させたことがある。たとえば、Xiaomiは競争力のある価格設定と優れたスペックのバランスを特徴とし、vivoはカメラ機能やデザイン性に重点を置いた製品展開を行った。こうした明確な差別化戦略が、成長の原動力となった。
一方で、今後の課題としては、成熟市場でのさらなるブランド価値の向上や、折りたたみ式スマートフォンのような革新的製品への対応が挙げられる。特に、AI技術を活用した新機能の導入が各社の競争力を左右する要素となるだろう。
折りたたみ式スマートフォンから生成AIへシフトする技術革新
IDCのリサーチディレクターAnthony Scarsella氏は、消費者の関心が折りたたみ式スマートフォンから離れつつある一方で、AI技術の進化が新たな注目分野となっていると指摘する。特に、高価格帯モデルにおいては生成AI(GenAI)の活用が加速しており、ユーザー体験を大幅に向上させる機能が続々と投入されている。たとえば、リアルタイム翻訳やカメラ機能における高度な画像処理などが代表的な例である。
こうした技術のシフトは、スマートフォンが単なるデバイスから、より高度な情報処理ツールへと進化していることを示している。ただし、この流れには研究開発への多額の投資が必要であり、特に中小規模のメーカーにとってはハードルが高いと言える。
一方で、AI技術は単なる機能向上にとどまらず、エコシステム全体の強化にもつながる可能性を秘めている。たとえば、クラウドサービスやスマートホームデバイスとの連携強化は、メーカー間の競争を一段と激化させる要因となるだろう。今後、どの企業がAI技術を活用した新しい価値を提供できるかが市場の勢力図を左右する鍵となる。
米国の関税政策とスマートフォン業界への影響
IDCのNabila Popal氏は、2025年以降の市場成長を見通す中で、米国の関税政策が業界に与える潜在的な影響に言及した。新たな政権下での関税増加の可能性が、特にアジアメーカーにとっての懸念材料となっている。現時点では影響は最小限にとどまっているものの、長期的には製造コストの増加や価格設定への圧力が避けられないだろう。
ただし、こうした外的要因に対する対応策として、メーカーは生産拠点の多国籍化を進める動きを見せている。インドや東南アジアでの生産能力の拡大はその一例であり、リスク分散を目的とした戦略的な選択と言える。また、各国の政府との協力や関係強化も、こうした不確実性への対応策として重要な役割を果たしている。
スマートフォン業界は、これまでも市場環境の変化に柔軟に対応してきた歴史を持つ。今回のような地政学的リスクも、業界全体が進化し続ける中で新たな成長機会を見出すきっかけとなる可能性があるだろう。