サムスンは、ピーク輝度5000ニットを誇る新型OLEDディスプレイを発表しました。このディスプレイは、従来の偏光板を取り除く「オンセルフィルム(OCF)」技術を採用し、輝度の向上と電力効率の大幅な改善を実現しています。
この新技術により、同じ輝度でも従来のパネルより消費電力を約63%削減できるため、バッテリー持ちの改善や発熱の抑制が期待されます。また、パネルの厚みも20%薄くなり、スマートフォンやノートPCのデザインの自由度が広がる可能性があります。
サムスンの新型OLEDディスプレイが実現した驚異の輝度と電力効率

サムスンが発表した新型OLEDディスプレイは、ピーク輝度5000ニットを実現し、従来の偏光板を排除する「オンセルフィルム(OCF)」技術を採用しています。
従来のOLEDパネルでは、偏光板が外光の反射を抑える役割を果たしていましたが、その一方で画面の輝度を最大50%も低下させる要因ともなっていました。この新技術によって、偏光板なしでも外光の影響を受けにくい構造を実現し、より明るく視認性の高いディスプレイが可能になりました。
このパネルは、画面の10%の領域で最大5000ニットの輝度を発揮できるとされています。一般的な測定では、ピーク輝度を狭い範囲(1%または5%)で測ることが多いため、10%という広い範囲でこの輝度を達成できるのは大きな技術的進歩といえます。さらに、日常の映像コンテンツ再生時には最大3000ニットの明るさを維持でき、これは現行のGalaxy S25 Ultraを上回る性能です。
加えて、OCF技術によって電力効率も大幅に向上しました。同じ輝度を維持しながら、従来のパネルと比べて消費電力を約63%削減できるとされており、これはバッテリー持ちの向上や発熱の低減にも貢献します。スマートフォンやスマートウォッチなど、モバイルデバイスに搭載されることで、より快適な使用体験が期待できそうです。
デバイスのデザインを変える薄型化技術とその影響
新型OLEDパネルは、輝度や電力効率だけでなく、物理的な薄型化にも成功しています。偏光板を省くことでパネルの厚みは従来比で20%も薄くなり、スマートフォン、ノートPC、折りたたみデバイスなどのデザインの自由度が大幅に向上しました。特に、折りたたみ式デバイスでは、ディスプレイが薄くなることで本体の軽量化やヒンジの耐久性向上といったメリットが期待されます。
この技術の先駆けとなったのは、Galaxy Z Fold 3に採用された薄型OLEDですが、今回の改良により、より広範なデバイスへ展開される可能性が高まっています。近年、スマートフォン市場では折りたたみ式や巻き取り式といった新たなフォームファクターの開発が進められており、今回の技術革新はそれらのデバイス設計にも大きな影響を与えそうです。
また、ノートPC市場でもこの技術は注目されています。ディスプレイが薄型化すれば、本体の軽量化だけでなく、バッテリースペースを広げることも可能になります。さらに、画面のエネルギー効率が向上すれば、長時間のバッテリー駆動が求められるモバイルPCにとって大きな利点となります。
サムスンの新技術が、スマートフォンやPCのデザインをどのように変えていくのか、今後の展開が注目されます。
ディスプレイ市場での競争とサムスンの狙い
サムスンディスプレイは、長年にわたり高輝度・高精細なOLED技術を開発し、スマートフォン市場をリードしてきました。しかし、近年は中国のBOEやTCLといったメーカーが急速に成長し、ディスプレイ市場での競争が激化しています。特にBOEは、高輝度OLEDパネルの開発を進めており、一部のスマートフォンメーカーではサムスン以外のパネルが採用されるケースも増えています。
こうした状況の中、サムスンが5000ニットの輝度と高い電力効率を実現したことは、業界に対する強いアピールとなります。特に、スマートフォンやウェアラブル市場では、バッテリー持ちと視認性の向上が重要視されるため、この新型ディスプレイはメーカーにとって魅力的な選択肢となるでしょう。また、今後のフラッグシップモデルやプレミアムノートPCへの採用も考えられます。
サムスンは、MWC 2025でこのディスプレイを披露し、他社との技術的な差別化を図っています。今後、他のメーカーがどのように追随するのか、ディスプレイ市場の競争がさらに激化しそうです。最終的には、こうした技術革新が消費者にとってのメリットとなり、より高品質なディスプレイを搭載した製品が普及することが期待されます。
Source:Gizmochina