Google Photosは、Pixel 8およびそれ以降の端末でUltra HDR品質を複雑な編集後も維持する新たな技術を導入した。従来、Magic EraserなどのMLツールで編集を行うと、画像がSDR品質に変換されていたが、新しいGain Map再構築モデルがこの問題を解決する。これにより、編集後もHDRディスプレイ向けの最適な表示が可能となった。
Google Photosの新しいUltra HDR編集オプション
Googleは最近、Google Photosに新たな編集オプション「Ultra HDR」を導入した。この機能はPixel端末での画像編集において、HDR画像の明るさをピクセルレベルでコントロールできる点が特徴である。Ultra HDRは、従来のSDR(標準ダイナミックレンジ)画像に比べ、より広い範囲で輝度やコントラストを再現でき、特に明暗差が大きいシーンでの撮影画像に効果的である。
この技術の導入は、スマートフォンでの写真編集における品質向上を目指しており、Pixel 8およびそれ以降のデバイスで利用可能となっている。これにより、ユーザーは高品質な画像を簡単に編集でき、元のHDR品質を損なうことなく美しい仕上がりが期待できる。
この新機能は、特に光の強い部分や影が多いシーンで、微細な調整を行う際に力を発揮する。従来の編集手法では再現が難しかった自然な階調を維持したまま、ユーザーが自由に編集できる環境を提供している。
複雑な編集がUltra HDRに与える影響
Ultra HDRを活用する際、これまでのGoogle Photosでは複雑な編集を行うとHDR品質が失われ、最終的な画像がSDR品質にダウングレードされる問題があった。これは、画像編集後に保存されるメタデータが影響し、SDR画像として再生成されてしまうためである。特にMagic EraserなどのML(機械学習)ツールを用いた際、この現象が顕著に現れる。
この問題の背景には、Google Photosのツールが主にSDR画像を前提に設計されていることがある。そのため、編集後の画像もSDRとして保存されてしまい、元のHDR画像の品質が失われる。また、特定の部分の編集によって、HDR画像特有のGain Map(明るさ調整用のログエンコードされた画像)が適切に反映されず、編集後の画像に「ゴースト効果」などの視覚的な不具合が発生することがあった。
これにより、Ultra HDRの真価が発揮されない状況が続いていた。しかし、今回の新しい技術により、この問題が解消される見通しとなっている。
Gain Map再構築モデルの導入で画質問題を解決
Googleはこの問題に対応するため、新たな「Gain Map再構築モデル」を導入した。このモデルは、編集後のSDR画像から失われたGain Mapを再構築するものであり、元のHDR品質を維持するための重要な役割を果たしている。この技術により、複雑な編集を行った後でも、編集前のHDR画像と同様の品質が保たれる。
Gain Mapは、SDR画像の各ピクセルがどれだけ明るくなるべきかを示すログエンコードされた画像である。これが適切に処理されないと、HDR画像特有の明るさやコントラストが失われる。しかし、Googleの新しいモデルでは、編集前の画像、編集後のSDR画像、そして元のGain Mapを元に、欠けた部分を予測し再構築することで、HDR品質を復元する。
このモデルは1MB未満のサイズであり、モバイルデバイス上でもインタラクティブなフレームレートで動作するため、ユーザーはリアルタイムで高品質な編集結果を得ることができる。
Pixel 8以降の端末での新機能展開
Google PhotosのUltra HDR編集機能は、Pixel 8およびそれ以降の端末で利用可能となった。これは、最新のハードウェアに対応した高度な編集機能を活用するためであり、より高度な写真編集体験を提供する。この新機能は、特にHDR対応ディスプレイを持つデバイスで最大限に効果を発揮するよう設計されている。
Pixel 8シリーズは、Googleの最新のAI技術を取り入れたデバイスであり、このUltra HDR機能の導入によって、ユーザーはより自然で高品質な写真編集を楽しむことができる。また、Googleはこの機能をサポートするために、数千枚におよぶHDR画像を用いてモデルをトレーニングしており、これによりさまざまな状況での編集品質が向上している。
これからのアップデートで、さらなる機能改善が期待されており、写真編集の新しいスタンダードを確立することになるだろう。