Pixel 9 Proに搭載された温度センサーが独立型のサーマルカメラFlir One Edge Proとどの程度競争できるのか検証した。
Flirカメラは赤外線検知による高精度な温度測定と視覚的な熱分布表示が可能で、家庭やアウトドアで幅広い用途に対応する。一方、Pixelのセンサーは人体の温度測定に特化し、医療機器としても認証されているが、動物や食品、表面温度測定では限界が見られた。それぞれのデバイスが異なるニーズを満たす特長を持ちつつ、使用シーンによる選択の重要性が浮き彫りになった。
Pixel 9 Proの温度センサーが示す医療用途の可能性
Pixel 9 Proに搭載された温度センサーは、医療機器として米国食品医薬品局(FDA)の認証を受けている点が他の温度測定デバイスと異なる重要な特徴である。
このセンサーは赤外線を利用して人体の温度を迅速に測定する仕組みを持ち、額や耳といった特定の部位で最適に機能する設計がなされている。一方、Flir One Edge Proは医療用には認証されていないが、幅広い温度範囲の測定が可能であり、人体以外の対象物にも適用できる柔軟性がある。
この技術の背景には、パンデミック時代における非接触型体温計の需要が急増した影響があると考えられる。
Pixel 9 Proのセンサーは、こうした市場の延長線上で開発された可能性がある。ただし、スマートフォン搭載の温度センサーがどこまで正確で信頼性が高いのかについてはさらなる議論の余地がある。人体以外の測定や高精度を必要とする医療現場では、依然として専用の機器が求められるだろう。技術革新が進む中で、スマートフォンが医療機器の一部として機能する時代が訪れるかどうか、注目される分野である。
温度測定の視覚化がもたらす利便性
Flir One Edge Proは、温度測定結果を視覚的に示す機能を持つ点でPixel 9 Proのセンサーとは一線を画す。赤外線センサーによって収集したデータを熱分布マップとして表示し、特定のエリアの温度を一目で把握できる。この特性は、家庭の熱効率のチェックや建物の断熱材の状態を確認する用途において特に有用である。また、アウトドア環境でも熱源の特定や地表温度の計測に活用可能であり、汎用性が高いと言える。
一方で、Pixel 9 Proのセンサーはシンプルな温度数値を表示するだけに留まるため、視覚的な情報を基に判断する場合には限界がある。特に、大規模なエリアで温度差を分析する必要がある場面では、Flirカメラの方が圧倒的に優れている。こうした視覚化の利便性は、技術者や建築分野の専門家だけでなく、一般ユーザーにとっても直感的な理解を可能にし、スマートホームの推進にも寄与するだろう。
スマートフォン温度センサーの未来
Pixel 9 Proの温度センサーが示す意義は、スマートフォンが日常の利便性を拡張する可能性にある。食品や飲み物の温度測定といった新しい使い方を提案する一方で、従来の温度計やサーマルカメラに比べて精度や応用範囲に制限があるのも事実である。特に食品の内部温度の確認や、動物の体温測定といった用途では、専用機器に頼る必要があるケースが多い。
ただし、スマートフォンにこうしたセンサーが搭載されることで、より手軽に温度測定が行える点は否定できない。
今後、この技術が進化し、精度や応用範囲が向上すれば、家庭用の多機能ツールとしての役割が一層拡大するだろう。また、Googleが今後のPixelシリーズで温度センサーをどのように改良し、他の用途にも対応できる技術を提供するかが注目される。スマートフォンが単なる通信端末を超え、包括的な生活ツールへと進化する可能性を示唆する技術革新の一端と言えるだろう。