サイバーセキュリティ企業「Lookout Incorporated」が発表した「モバイル脅威レポート」によると、2024年初頭のフィッシング攻撃による被害が、AppleのiOSデバイスで特に顕著であることが明らかになった。企業で使用されているiOSデバイスの19%がフィッシング攻撃を受けた一方、Androidスマートフォンの被害率は10.9%にとどまる。

この報告書は、攻撃者がフィッシングや悪意あるアプリを活用してログインデータを狙う手口が増加していることを指摘する。同時に、古いオペレーティングシステムの使用やセキュリティ更新の遅れが、被害を広げる主な要因として挙げられている。

セキュリティ対策を怠れば、個人だけでなく企業全体がリスクにさらされる現代の状況を浮き彫りにした報告であり、技術企業にも迅速な対応が求められる。

iOSデバイスのセキュリティ神話が揺らぐ理由

Apple製品は長年にわたり、安全性と使いやすさを両立したプラットフォームとして高い評価を受けてきた。しかし、「Lookout Incorporated」の最新のモバイル脅威レポートによると、iOSデバイスが特にフィッシング攻撃のターゲットとなっていることが判明した。この傾向は、企業利用のiOSデバイス19%が被害を受けたという具体的なデータに裏付けられている。

iOSの安全性に関する神話が揺らいでいる背景には、フィッシング手法の進化がある。攻撃者は、正規のメッセージや通知を装い、巧妙にログイン情報を盗み出す技術を進化させてきた。また、iOSのユーザー層が比較的高所得であることも、攻撃者にとって魅力的なターゲットとなっている可能性がある。

この事実は、Appleのエコシステムに依存する企業や個人にとって警鐘を鳴らすものであり、セキュリティ神話に過信せず、最新の対策を講じる必要性を示している。


Androidデバイスが抱える別のセキュリティ課題

一方で、Androidデバイスもセキュリティの完全性を保つための課題を抱えている。「Lookout Incorporated」の調査によれば、2024年の各四半期でAndroidデバイスの10.9%がフィッシング攻撃の被害を受けた。この数字はiOSデバイスの被害率より低いが、Android特有の問題点も浮かび上がっている。

Androidは多数のメーカーが独自のカスタマイズを施しており、OSのアップデートが迅速に適用されないケースが多い。この結果、古いバージョンのOSに脆弱性が残ることが、セキュリティリスクを拡大させる一因となっている。また、Google Play以外のアプリストアからのダウンロードが許可されていることも、悪意あるアプリの侵入を許す可能性を高めている。

このように、Androidのオープン性が利便性を提供する一方で、セキュリティ管理の複雑さを増大させている。ユーザーはセキュリティソフトの導入や信頼できるアプリのみを利用するなど、自身でリスクを軽減する努力が求められる。


サイバー攻撃の未来と企業の責任

「Lookout Incorporated」の報告によれば、2024年の最初の3四半期だけで、認証情報窃盗やフィッシング試みが前四半期比で17%増加し、悪意あるアプリの検出は32%増加している。これらの数字は、サイバー攻撃が急速に高度化し、従来の対策だけでは不十分である現状を示している。

攻撃の増加は、企業のセキュリティ管理に対する責任を再考させる要因となっている。特に、セキュリティアップデートの遅れや既知の脆弱性の放置が、攻撃の足掛かりとなるケースが多い。Lookoutは公式声明で、技術企業が発見された脆弱性に迅速に対応し、必要な修正を提供する義務があると強調している。

一方で、利用者にもセキュリティ意識の向上が求められる。特に企業のIT部門は、最新のセキュリティプロトコルを導入し、従業員への教育を徹底することが重要だ。サイバー攻撃に対する防御は、技術と人間の協力による総合的な取り組みが鍵となるだろう。