ファーウェイは折りたたみスマートフォンの分野で革新を続けており、最新モデル「Mate XT」を正式にグローバル市場へ投入することを発表しました。この新端末は、従来の二つ折りではなく、三つ折りに対応する「トリプルフォールド」デザインを採用。折りたたみスマートフォンの可能性をさらに広げるデバイスとして注目されています。
Mate XTは、折りたたんだ状態では6.4インチのコンパクトなスマートフォン、1回開けばタブレットサイズ、さらに広げると10.2インチの大画面へと変化する仕様です。ファーウェイはこの革新的なフォームファクターにより、スマートフォンとタブレットの境界を超える新たな使用体験を提供するとしています。
同端末は、2025年2月18日にマレーシア・クアラルンプールで発表され、ヨーロッパなどの市場へも展開される見込みです。ただし、米国市場への投入は、制裁の影響により見送られる可能性が高いとされています。価格については正式な発表はないものの、約42万円程度になると予測されており、高価格帯ながらも唯一無二の特徴を持つ端末として関心を集めています。
Mate XTの三つ折り構造がもたらす新たなユーザー体験

Mate XTは、折りたたみスマートフォンの常識を覆す「トリプルフォールド」構造を採用しています。通常の折りたたみスマートフォンは二つ折りが主流ですが、Mate XTは本体を三段階で変形させることが可能です。
折りたたんだ状態では6.4インチのスマートフォンとして使用でき、1回広げるとタブレットサイズ、さらに開くと10.2インチのフルサイズディスプレイへと変化します。この柔軟な構造により、持ち運びの利便性を確保しながらも、大画面での操作性を向上させることに成功しています。
トリプルフォールド構造のメリットは、1台で複数のデバイスを兼ねる点にあります。スマートフォンとしてのコンパクトさと、タブレットとしての大画面の両立が可能なため、用途に応じて最適な形で使用できます。また、厚さは完全に開いた状態でわずか3.6mmと非常にスリムなため、大画面ながら持ちやすさを損なわない設計が施されています。
しかし、この構造には耐久性やヒンジの強度といった課題もあります。一般的な二つ折りスマートフォンよりも可動部分が増えるため、長期間の使用でどの程度の耐久性を保てるのかは未知数です。
また、折りたたみ時の隙間や画面のシワなど、ユーザー体験に影響を与える可能性がある要素も考慮する必要があります。とはいえ、ファーウェイが過去に培った折りたたみ技術を踏襲していることから、改良が重ねられていると期待できます。
Kirin 9010とHarmonyOS NEXTがもたらす処理性能と操作性の特徴
Mate XTには、ファーウェイの自社開発プロセッサ「Kirin 9010」が搭載されています。このプロセッサはオクタコア構成で、最大2.3GHzの動作クロックを備えています。しかし、AppleのA17 Pro(最大3.2GHz)や、SamsungのSnapdragon 8 Gen 2(最大3.36GHz)と比較すると、単純なクロック周波数の面ではやや劣る印象を受けます。
そのため、最新のハイエンドスマートフォンと比べると、処理速度に違いが生じる可能性があります。ただし、ファーウェイは独自の最適化技術により、実際の操作感ではスムーズな動作を実現できるとアピールしています。
また、Mate XTはAndroid OSを排除し、独自の「HarmonyOS NEXT」を採用しています。これは、従来のHarmonyOSから進化した新バージョンであり、Androidアプリとの互換性を持たない完全独立型のシステムです。中国市場ではこのOSが主流となると考えられますが、グローバルモデルでは「EMUI」が採用される可能性が高いと報じられています。
EMUIはAndroidアプリとの互換性を維持しており、既存のアプリエコシステムを活かすことができるため、利便性の観点からもグローバル市場向けに適しているといえます。
とはいえ、HarmonyOS NEXTの導入は、Androidアプリを利用していたユーザーにとって大きな転換点となります。既存のアプリが使用できないことに加え、開発者側の対応も求められるため、エコシステムの充実度がカギとなるでしょう。ファーウェイは、独自のアプリストア「AppGallery」を強化し、より多くのアプリを提供することで、ユーザーがスムーズに移行できる環境を整えようとしています。
価格と市場展開の展望 競争相手の不在が生む独自のポジション
Mate XTの価格は正式には発表されていませんが、中国市場での販売価格から推測すると、およそ2,800ドル(約42万円)程度になると見込まれています。これは、折りたたみスマートフォンの中でもハイエンドな価格帯に位置し、一般的なスマートフォンと比較しても高額です。しかし、現在市場にはトリプルフォールド構造を採用した競合製品が存在しないため、価格競争の影響を受けにくい状況です。
現時点で折りたたみスマートフォン市場をリードしているのは、SamsungのGalaxy Z Foldシリーズや、GoogleのPixel Foldなどの二つ折りモデルです。これらと比べ、Mate XTの三つ折り構造は独自性が高く、他社との差別化要因となっています。ユーザーにとっては、唯一無二の仕様を持つデバイスとして魅力的に映る可能性があります。
市場展開においては、2025年2月18日にマレーシア・クアラルンプールでの発表を皮切りに、ヨーロッパなどへ順次展開される予定です。しかし、米国市場は依然として制裁の影響を受けており、正式な販売は見送られる可能性が高いとみられています。これにより、米国を含む西側諸国ではSamsungやGoogleが折りたたみ市場を牽引し、ファーウェイの影響力は限定的となる可能性があります。
とはいえ、Mate XTのような新しいフォームファクターを採用した製品が登場することで、折りたたみスマートフォン市場全体が活性化することは間違いありません。今後、他のメーカーも同様のトリプルフォールドデザインを採用する可能性があり、これが新たなトレンドとなるかどうかが注目されます。
Source:Techloy