サムスンは現在、次世代チップセット「Exynos 2500」の開発に取り組んでいますが、3nm GAAプロセスの歩留まり問題により、十分な量を生産できず、Galaxy S25シリーズにはSnapdragon 8 Eliteのみが採用されることになりました。
これを受け、サムスンの半導体設計事業部の責任者であるパク・ヨンイン社長は、LSI部門の社員に向けてメールを送り、Exynos 2500とGalaxy S26シリーズの同時開発を支えるよう呼びかけました。
この決断は、サムスンにとって大きな挑戦です。Exynos 2500の最適化は進められているものの、2nm GAA技術を活用した「Ulysses(ユリシーズ)」と呼ばれる次世代Exynosの開発も同時に行われています。しかし、製造プロセスではTSMCに遅れをとっており、現在の2nmプロセスの歩留まりはTSMCが60%に対し、サムスンは30%程度と報じられています。
さらに、サムスンは自社チップの開発を加速させることで、Qualcommへの依存度を下げ、コストを抑える戦略をとっています。ただし、過去の歩留まりの問題を考慮すると、Qualcommの「Snapdragon 8 Elite Gen 2」の受注を逃す可能性も指摘されています。サムスンがこの試練をどう乗り越えるのか、今後の動向に注目が集まります。
Exynos 2500の歩留まり問題 なぜ3nm GAAは難しいのか

サムスンが3nm GAAプロセスの歩留まり向上に苦戦していることは、Exynos 2500の量産計画に大きな影響を与えています。従来のFinFET技術に比べ、GAA(Gate-All-Around)はトランジスタの構造を根本から変えることで、より高い電力効率と性能向上を実現するとされています。しかし、GAAの実用化には高度な製造技術が必要で、トランジスタの均一性を確保することが極めて難しいといわれています。
TSMCと比較すると、サムスンの3nm GAAの歩留まりはまだ安定しておらず、十分な生産量を確保できない状態が続いています。報道では、TSMCの2nmプロセスがすでに60%の歩留まりを達成しているのに対し、サムスンの歩留まりは30%程度とされており、この差がExynos 2500の生産に影響を与えていると考えられます。また、GAAは従来のFinFETよりも製造コストが高く、工程の複雑さがさらなる課題となっています。
この問題を克服するために、サムスンは製造プロセスの最適化を進めていますが、その進捗次第では、今後のExynosシリーズにおいてもSnapdragonへの依存が続く可能性があります。
ただし、サムスンは次世代Exynos「Ulysses」に2nm GAA技術を導入する予定であり、歩留まりの向上が進めば、競争力のあるチップセットが誕生する可能性もあります。今後、サムスンがこの技術的課題をどのように克服するのかが注目されます。
Galaxy S26のチップセットはどうなるのか Exynos復活の鍵とは
Exynos 2500の生産問題により、Galaxy S25シリーズにはSnapdragon 8 Eliteのみが採用されることが決まりました。しかし、サムスンはGalaxy S26シリーズに向けてExynos 2500を開発し続けており、自社製チップの復活を目指しています。これが成功すれば、サムスンにとってはチップセットの内製化によるコスト削減だけでなく、スマートフォンの設計自由度を高めるメリットも得られます。
Exynos 2500がGalaxy S26に搭載されるかどうかは、今後の製造状況にかかっています。もし歩留まりの向上とパフォーマンスの最適化が成功すれば、複数の市場向けにExynos版のGalaxy S26が展開される可能性があります。しかし、Snapdragonに匹敵する性能と安定性が確保できなければ、Galaxy S26も引き続きSnapdragonに依存することになるでしょう。
また、サムスンはExynosシリーズを通じて、Qualcommとの競争力を高めることを目指しています。特に、AMDのRDNA 3.5アーキテクチャを採用したXclipse 950 GPUの性能が鍵を握るとされています。
もしグラフィック性能が大幅に向上すれば、Exynos 2500はゲーミング性能の面でも大きな進化を遂げる可能性があります。最終的に、Galaxy S26がExynos版とSnapdragon版の両方を展開するのか、それともSnapdragonの独占が続くのか、その決定は今後の技術進化と製造状況によって左右されるでしょう。
サムスンの自社開発チップ戦略 Qualcomm依存からの脱却は可能か
サムスンは長年にわたりExynosシリーズの開発を続けていますが、ここ数年はQualcommのSnapdragonチップに大きく依存しています。特にハイエンドモデルでは、Exynosチップの性能や発熱問題が指摘され、消費者の評価も芳しくありませんでした。その結果、Galaxy SシリーズではSnapdragon版が主流となり、Exynosは一部地域限定のモデルにとどまる状況が続いています。
こうした中、サムスンは自社製チップの競争力を取り戻すため、次世代の2nm GAA技術を採用したExynos「Ulysses」を開発しています。この技術が成功すれば、電力効率と処理能力の向上が期待され、Snapdragonへの依存を減らすことができるかもしれません。また、サムスンはチップ設計だけでなく、半導体製造プロセス全体を強化し、TSMCに対抗する姿勢を示しています。
しかし、QualcommはSnapdragonシリーズの進化を続けており、特にTSMCの3nm N3Pプロセスを活用する「Snapdragon 8 Elite Gen 2」は高い性能を誇るとされています。そのため、サムスンがExynosの完全復活を果たすには、技術面だけでなく、歩留まりや消費電力の最適化も必須となるでしょう。今後、サムスンがQualcomm依存から脱却できるかどうかは、Exynos 2500や次世代Exynosの成功にかかっています。
Source:Wccftech